ラビ文献における「モーセの死・昇天・ミカエル」の別伝
1. モーセの死と神の埋葬
- 申命記34章では「主がモーセを葬った」と記述されているが、ラビ文献ではこれを膨らませ、
- 神自らがモーセの遺体を担い、天使たちが弔いの列をなした(ミドラーシュ・ラッバ申命記11:10など)
- 神が「自ら友を葬った」という唯一の事例とされ、ユダヤ伝承では最大級の栄誉とされる。
2. サタン(サマエル)がモーセの魂を奪おうとする伝説
- タルムード(ソタ13b)やミドラーシュでは、
- サマエル(サタン/死の天使)がモーセの魂を奪おうと現れる。
- だがモーセは「私は主にのみ仕えてきた」と主張し、サマエルを撃退する。
- 神はサマエルに「義人の魂を奪うことはできない」と告げ、最終的には**神自身がモーセの魂を唇で吸い取るように召し上げる(=「神の口づけでの死」)**とされる。
- その場に天使ミカエル(ミカエル、ガブリエル、ズリエルなど)が登場し、弔いに参加するというバージョンもある。
3. ミカエルの役割
- 一部伝承では**「ミカエルがモーセの遺体を守り、埋葬の任務を負った」**とされる。
- サマエル(サタン)はモーセの遺体を奪おうとし、「人は罪のために死ぬのだ」と主張するが、ミカエルは「主があなたをとがめてくださるように」と神の権威に委ねてこれを退ける。
- ミカエルは「イスラエルの守護天使」として、神に仕え、義人の魂や遺体を守る役目を持つとされる。
4. 墓の秘密性・昇天の要素
- ラビ文献では「モーセの墓の場所が誰にも知られていない」ことが繰り返し強調される(申命記34:6)。
- 「墓が地上にも天上にもなく、モーセは神とともにある」とする伝承も存在する。
- 一部伝承では、「死後すぐに魂が天に昇る」=「昇天」的な要素も加えられる。
5. ミカエルの弔い・サタンの屈服
- 「ミカエルがモーセの魂を守る」「天使たちが弔いの歌を歌う」など、天使が葬送の儀式に参加するモチーフが加わる。
- サタン(サマエル)は最終的に神の命令とミカエルの権威の前に屈する。
まとめ
ラビ文献の別伝では、
- モーセの死は特別であり、神自身と天使たちが関与した
- サタンが魂や遺体を奪おうとするが、ミカエルがこれを退ける
- ミカエルは義人・イスラエルの守護者、遺体の守護者として登場
- 墓の場所の秘匿や魂の昇天的モチーフも強調される
この伝承群は、後世のユダヤ教・キリスト教におけるミカエル信仰や死後観、天使論、聖人伝説の原型となりました。